
中年サラリーマンの出口戦略 ~定年後の収入を確保するための Exit Strategy
これまでこのブログでは起業やスモールビジネス、ソロプレナーについての記事を掲載してきました。それらをベースに、日本の中年サラリーマンが定年後を見据えて起業するためのスキームについて述べていきたいと思います。
起業というと若い人たちが中心のスタートアップをイメージする人が多いと思いますが、中年サラリーマンにも無関係ではありません。むしろ50代のサラリーマンこそ起業を考えるべきだと思うのです。
定年後の起業を考えている人は、50代でスモールビジネスを始めることをお勧めします。いわゆる副業です。どうせ何度も失敗するので、始めるのは早い方がよいでしょう。月に1万円でも5万円でも売り上げがあれば十分です。そこに行くまでに何年もかかるはずです。
売り上げが安定したら、それを定年まで続けます。
これから何回かに分けて、50代サラリーマンが起業すべき理由とその方法を掲載したいと思います。
1.50代で起業する、定年直前に独立する ~ 小さな失敗を早めに経験しよう
サラリーマンをやっているあなたが明日起業しても、成功する確率は限りなくゼロに近いでしょう。成功するためには計画と準備とそして何より経験が必要です。定年後の起業を目指すのであれば40代、50代から起業の“練習”を始めましょう。
副業は小さく始めるのがコツ
最初は極小さな規模で始めて、失敗しても生活に影響しない程度の損失で済むことが重要です。もちろん会社は辞めずに、会社に内緒でこっそりやりましょう。
副業で始めるビジネスはリスクを最小限にする必要があります。サラリーマンをやりながら自分の生活を維持することが基本条件であり、副業に失敗して生活を失うようなことがあってはなりません。ベンチャーキャピタルから資金を調達して、巨大なリスクを抱えながらスタートアップを始めるのとは別物でなければならないということです。そのためには、小規模で無借金で、失敗しても負債を抱えない範囲で実行することです。
スモールビジネスを成功させるためには、とにかく特徴を出して差別化を図ることが重要です。安易な考えで副業を始めても、まったく利益は出ないでしょう。独自性を出しすぎて独りよがりになると、市場に受け入れられず、ほぼ間違いなく失敗します。先鋭化した特徴で差別化して、ニッチ市場を獲得することができれば、成功する確率は高くなります。そして、将来それを本業にしてさらに事業拡大する道も開けてくるのです。
副業や兼業を始めるためには、まず何をやるかを決めなければいけません。この際だから、以前から自分がやりたいと思っていたことを実現させてみるのも良いでしょう。 あるいは、自分の“思い”とは無関係に、市場分析に基づいてUnmet Needsを見つけ出し、それを仕事にるすという考え方もありです。Unmet Needsとはマーケティング活動の中で、顧客の潜在的な要求や需要で「まだ満たされていないニーズ」のことをいいます。
小さな失敗を繰り返して要領をつかむ
副業を始めるためには、小さな失敗を何度も経験することで要領をつかむ時間が必要です。それには数年単位の時間がかかると思ってください。
副業でスモールビジネスを軌道に乗せるのは簡単ではありません。何度も失敗をして、何年もかけて成功するビジネスモデルにたどり着きます。
もちろん、マーケティングの知識があれば「リーンキャンパス」「5フォース分析」「SWOT分析」「ポジショニングマップ」などのツールを使って戦略を立てるのも良いでしょう。ただし、それらはあくまでも机上の理論であって、現実とはギャップがあることを理解する必要があります。 以下に、私が失敗したスモールビジネスの事例を2つ紹介します。
・失敗の事例(1)平成の米騒動で加州米の個人輸入の代行を企画、コストが合わずに断念

30年も前の話ですが、“平成の米騒動”というのがありました。1993年(平成5年)に天候不順による冷害のため、全国的な稲の生育不良で、日本国内でコメが記録的な不作になりました。平成の米騒動とも呼ばれている出来事です。
私は1980年代半ばに3年間アメリカのアリゾナ州に住んでいました。そこで食べていたのがカリフォルニア米です。平成の米騒動が起こったのは、私が日本に帰国して7年目くらいの時でした。
そこで私はコメ不足の日本で、カリフォルニア米を輸入することを考えました。調べてみると、当時の日本はコメの商業輸入が認められておらず、個人輸入が年間で100Kgまで認められていました。
そこで、個人輸入の代行サービスを計画しました。米の個人輸入を希望する人に、カリフォルニアでの買い付けと発送業務、日本での輸入通関と国内配送の手配を代行するサービスです。翌年の新米が出るまでの一年間だけの期間限定のビジネスです。
私がこれを思いついたのは、当時働いていた日本の会社で輸出入業務を少しやったことがあったからです。モノは違いますが、仕事で経験した内容の応用としてできる自信がありました。
早速ロサンゼルスの知り合いに、現地で手配をしてくれる人物を紹介してもらって、テストランとして自分用にカリフォルニア米の買付けと個人輸入を実行しました。結果は、コストが合わずに事業化を断念しました。そして自宅に100Kgのカリフォルニア米が積み上がり、我が家は1年間それを食べ続けなければなりませんでした。
後で失敗の原因をふりかえって、以下のような分析をしています。
– コストが高く、ブレークイーブンポイントが上昇したことが直接の原因
– 翌年秋までの期間限定の市場であったことも失敗の要因
– 顧客リーチの戦略が全くなかった
・失敗の事例(2)コロナワクチンの接種済みバッジを販売、800個売れたが結果は赤字

もう一つの失敗事例は新型コロナのワクチン接種済みバッジの販売です。その当時私はアメリカ、ロサンゼルスの郊外に住んで、日本企業のイノベーションを支援するコンサルタントをしていました。この時は独立して自分の会社をもっていたのでサラリーマンの副業とは少し違います。
新型コロナのパンデミックが始まって1年経ったタイミングで、これまででは考えられない驚異的なスピードでワクチンが開発されました。m-RNAを使って体の細胞内で抗体を作るという前代未聞の離れワザです。
アメリカではそのワクチンが緊急承認され2020年の年末から医療従事者に優先的に接種が始まりました。一般の人は翌年の2月から高齢者と基礎疾患を持つ人から接種が始まりました。
日本では約半年遅れで、6月頃から接種が始まる予定になっていました。
私は3月にm-RNAワクチンを接種することができました。その時に、“ワクチン接種済”のバッジが売られていることを知りました。たしかに、人より少し早くワクチン接種ができたので、ちょっとだけ自慢したい気持ちになるのです。
そこで、そのバッジを日本語にして日本で販売する計画を作りました。すぐに日本に行って、個人事業主を開業してアマゾンのFBAアカウントを取得し、バッジの製造委託先を探しました。あとはアメリカに帰ってリモートで販売します。ファブレス、リモートの通販ビジネスモデルです。しかも半年の期間限定ビジネスです。
結果は、3,000個仕入れて800個しか売れず、約12万円の赤字でした。失敗の原因を以下のように分析しています。
- – 競合乱立で価格競争になった
- – 1ケ月で売れなくなった(想定よりも短期間で市場が飽和した)
- – 狙っていたバルク販売に移行できなかった
- – Amazonの手数料が予測以上に高かった
その他にも失敗したビジネスや、既存ビジネスでの失敗はたくさんあります。そういった失敗から得た教訓に以下のようなものがあげられます。詳細を説明すると長くなるので、項目だけをいくつかを紹介します。
・副業は自分の得意分野でやると成功する確率が高い、自分のプロフェッショナルな何か
・自分の得意分野でスキルをさらに磨く、自分のスキルを自己評価して弱いところを伸ばす
・顧客の顔が見えている必要がある、それでも期待通りにはいかない
・失敗しているうちは副業ではない、つまり会社に言う必要はない
次回は『中年サラリーマンの起業スキーム』